3.真っ白な世界 

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晋作さんは座ったまま、 力強く抱きしめてくれた。 「君のことは、  俺がみる。  今はゆっくり休んだらいい。  何もかも忘れて、この長州の海を眺めて  過ごせ。  名前がないと不便だな。  何時までも君ばかりじゃ味気ない」 そう言って、 その人は……私の持ち物とされた 何かを手にとってペラペラとめくった。 「……舞……。  舞でどうだ?。  君は名前も記憶も忘れて  突然、俺のもとに舞い込んできた」 「……舞?……」 「あぁ。    舞、今日からの君の名だ」 ……舞……。 初めて紡がれる名前のはずなのに、 その名を紡がれるたびに心の中が少し暖かくなった。 「……舞……」 「あぁ。  舞だ……。  少し俺は出掛ける。  この屋敷は自由に使えばいい」 晋作さんはそう告げると、 部屋を出て行ってどこかへ消えて行った。 一人残された部屋。 布団の中から立ち上がって 裸足のまま、畳の上を歩いていく。 義助さんと晋作さんが出て行った 襖とは逆の障子をゆっくりと開け放つ。
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