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「今日も霧が濃いったらありゃしねえ。」
そう愚痴をこぼすのは普段、神社へ参拝に来た人々を迎え入れる鳥居(とりい)だ。
赤い短髪を指先で弄りながら階段を上ったり下がったりしている。
「愚痴をたれる暇があるならば少しは枯れ葉を集めろ!」
厳しく鳥居を叱り付けるは手水舎(ちょうずや)だ。
笠を目が隠れるほど深く被り、肩にちょうどつくほどの長さをした銀髪を紐で結っている。
「げぇ、おめぇかよ。来るな、しっし!!」
「誰に向かってものを言うとるんじゃ!!」
「まあまあ、お二人さん、少し落ち着きんしゃい。」
いがみ合う二人の間を仲裁するのが狛犬(こまいぬ)。独特な喋り方をするのが特徴である。
首に太く長いしめ繩を巻いており、身体より幾分か大きな羽織りを身にまとっている。
「ぎゃいぎゃい騒いどる暇があんなら本殿へ行って主様に挨拶して来るんだ。」
「へいへい。」
「……はい。」
二人は渋々本殿へ向かった。
「…さて、わんは寝るとするかの。」
狛犬は石段の上へ飛び乗りゆったりと座り込んだ。
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