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本殿に入ると、そこには霧神神社の主である鴉天狗がいた。
神社とは昔、山、滝、岩、森、巨木など多く自然を畏れ「カミ」(=信仰対象、神)とみなしたのである。
霧神神社のある地方では、年中霧が濃く、その霧は神が出現させていると言い伝えられていたため、この神社が立てられた。
そのため、ここに住み着いた鴉天狗を神だと思い込んだ人々が勝手に拝めているらしい。
「…ふむ、手水舎に鳥居であるか。」
「ババァ、しけた面しやがってどうしたんだよ?」
鳥居がへらへらとしながら声をかけると鴉天狗はムッとした。
「わしはババァではない!」
「ババァ!」
「ババァ!」
鳥居の真似をし、走り回っているのは双子の燈籠である。
赤い髪のほうが燈夢(とうむ)、青い髪のほうが籠幻(ろうげん)である。
「ババァではない!!!!そんなことより、人の子らからの願いはきておるか?」
「ええ、もちろん。」
奥から文字の綴られた紙を片手に持った青年が現れた。
名は凛次郎(りんじろう)。
この神社で唯一の人間だ。
17の時に神職としてやってきた。
色白で、いつも目の下に隈をつくっているため不健康に見える。
「凛次郎よ、どんな願いであるか?」
「はい。寄せられた願いは…」
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