0人が本棚に入れています
本棚に追加
人と妖怪
「願いは…、四つ。全て、霧を払い飛ばしてほしい…とのこと。」
「毎日飛ばしておるではないか。」
「…それが、川辺ではまだ濃い霧が、と。」
「仕方あるまい。わしに水辺で起きるものをどうにか出来るはずがなかろう。」
鴉天狗は不機嫌そうに凛次郎に言うと、黒い翼を少し羽ばたかせた。
凛次郎は紙を折り畳み、懐にしまい込むと賽銭の入った巾着袋を鴉天狗へ渡した。
「ご苦労。…まあどうにかしてみよう。」
扇を手に取ると鴉天狗は本殿から出て行った。
「何だかんだ行って、どうにかしてくださるのが天狗様の良い所ですね。」
「そうかあ?いっつも文句言ってんじゃん。」
優しく微笑む凛次郎の顔をふて腐れたような顔で鳥居は見た。
最初のコメントを投稿しよう!