アイスクリームシンドローム

3/30
前へ
/30ページ
次へ
「…まああいつは空気を読まん、せっかく長い時間かけて姉貴に恥を忍んでハーゲンダッツ奢ってようやく作ったムードも茶化されて終わっちまった」 「…さすがヘタレ」 「誰から聞いた」 「黙秘権です」 「…まあいい、あたりはつけてる。 そんな感じで打ち明けられるはずもなく、カッコもつけられないのさ。 あいつ、湯宮麻美の前じゃ俺は」 やたら太陽が熱く照りつけている金曜日。Tシャツも少し汗ばんでたな。 ジメッとした空気とその時の俺は似ていたかもな。いつまでも乾きやしない。 冷房を求めて逃げ込んだコンビニ。そこにはそれはそれは懐かしい漫画があってな、俺と麻美が小学生のころから好きだったやつ。 なんとなくアイスと一緒に買っちまって公園で読んでみた。 やっぱしあんま面白くはなかったけど、麻美となら笑えたかも。 「家隣同士なのにどうしていかなかったんですか?」 「どうして知ってる」 「プライベートです」 「こっちのプライベートがさらけ出されてるんだが!?」 「それはそれとして、そういうとこ踏み出さないのがヘタレたる所以ですよね」 「お前の辞書には敬うって言葉はないのか?」 「媚びない、がモットーです」 「……話続けるぞ」
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加