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そう思ったらすっげえ麻美に会いたくなって、すぐにでもしゃべりたくなって、電話の短縮一番をプッシュ。
いつもよりももっとマジメな声で、あいつを誘い出せるかな。
『麻美。今暇か?』
『うん、全然大丈夫だよ』
『散歩行かねえか?』
『珍しいね、謙吾が散歩に誘うなんて。被写体探すのは一人がいいんじゃないの?』
『気分の問題だ。五分したら出てこい』
五分後、涼しげな格好した麻美を連れて、適当に練り歩いた。
実際、目的地なんてなかった。そのまま連れ去っちまおうなんて考えもどこかにはあったな。
『へー、こんなとこから川に出るんだね』
『完璧に裏道だからな、俺以外に通ったやつなんてみたことすらない』
カメラを持って、下流に降りていく水をとる。
『子供の頃からなんにも変わんないね』
『そうか? 周りに建物増えてないか?』
『でもでも、あの古いビルはまだあるよ!』
小学生の頃、二人で入った廃ビル。
二人して中に入っていく。
中は、ビルの隙間から太陽の光が差し込み、飛んでいる埃をきらめかせる。
『………』
ここなら、勢いで抱え込み続けたこの思いだって、
「それでくっついたんですか?」
「…麻美が言ってただろう? 俺たちは親友だって」
口を開こうとした。
だが、先に麻美がしゃべりだした。
『あたし、来宮君と付き合うことになった!』
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