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「まあ、あれだ。
俺は正直に来宮の評価してたし、俺は来宮を信頼してるし、俺の望んだ結果だ」
「でも、先輩が」
「俺が幼なじみって位置にかまけて、進むのをためらったのがいけないんだよ。筋金入りのヘタレさ、実際の俺なんて。『万能庶務』なんて大層な渾名もらったって、その程度なんだよ」
まあ話もとうとう大詰めだな。
その瞬間、なんとなくカメラをかまえた。そんで…やっぱり麻美はどうしょうもなく遠く感じた。
もしも手が届きそうなくらいそばに、麻美がいたらなんて、馬鹿なこと考えるんだ。
時既に遅しって感じたよ。
フィルムに廃ビルで笑う麻美を焼き付けて、そして思った。
『(別に、隣じゃなくても)』
二人の近くで、一緒に馬鹿やって笑いあって。
幸せは、増えたって減るもんじゃない。
そうさ、麻美がどこかにいさえすれば、どんな一瞬も煌めいて見える。
「…こんな位でいいか?」
「はい…」
「…別に同情なんてする必要はない。お前がそんな落ち込んでいるの見ると、こっちが申し訳なくなる」
「では、最後に好きな言葉と嫌いな言葉を」
「…好きな言葉は、『時は金なり。』
嫌いな言葉は、『大器晩成』」
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