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澤田が望んだように、沖田は渾身の一撃で突きを放った。
天才の一撃は、澤田の反射神経をも越え、肩に食い込む。
「あぁぁぁああんっ!」
痛みから、澤田は声を荒げて床に倒れた。
「そこまでっ!」
土方の一声が響き、場内はざわめきだす。
誰もが、半笑いを浮かべていた。
澤田 鉄治の腕前よりも、声が面白いようである。
肩をおさえ、澤田は立ち上がった。
その表情は清々しく、やはり恍惚としている。
試験の結果、澤田 鉄治は壬生浪士組に入隊することが出来なかった。
澤田が打ち合う度に出してしまう声がいけない。
沖田には敵わぬものの、良い腕前であるにも関わらず、土方は澤田をその声を聞いた瞬間から変態だと思っていた。
故に、入隊させなかったのだった。
そんな理由を知らず、ただ不合格と言われただけの澤田は思う。
自分は、まだまだ強くなれる、と。
負けたから入隊出来なかったのだ、と。
そして、澤田は自身に誓った。
次こそは壬生浪士組に入隊する、と。
終わり
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