第一章 俺とわんこ

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「落ち着けって。わかった、縄を解く。解くから黙ってくれ……」 よろよろとハサミを取り出し、犬耳を縛っていた縄を切る。 「ほら。縄は解いたぞ?俺ももう昨日のことは水に流す。これで仲直りしてくれよ」 できるだけ警戒心を抱かせないように目線を合わせ、手を差し出す。 「お前、名前は?」 「……犬走椛です」 まだ心を許す気はないのか、差し出した手には応じず、ぼそりと自分の名前を呟く。 しかし、犬かぁ……。 「なぁわんこちゃん……」 「犬とは失礼な!」 くわっと目を見開き、叫ぶわんこちゃん、もとい椛。 「すまんすまん。流石に犬は言いすぎた」 「まったくです!」 プリプリと怒る椛。 さっきまでの怯えた雰囲気はさっきの一言で払拭されたようだ。 「じゃあ、その犬耳は何さ。趣味か?」 「歴とした本物です!」 それを証明するかのようにピコピコ動く白い犬耳。 ……え?
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