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「落ち着けって。わかった、縄を解く。解くから黙ってくれ……」
よろよろとハサミを取り出し、犬耳を縛っていた縄を切る。
「ほら。縄は解いたぞ?俺ももう昨日のことは水に流す。これで仲直りしてくれよ」
できるだけ警戒心を抱かせないように目線を合わせ、手を差し出す。
「お前、名前は?」
「……犬走椛です」
まだ心を許す気はないのか、差し出した手には応じず、ぼそりと自分の名前を呟く。
しかし、犬かぁ……。
「なぁわんこちゃん……」
「犬とは失礼な!」
くわっと目を見開き、叫ぶわんこちゃん、もとい椛。
「すまんすまん。流石に犬は言いすぎた」
「まったくです!」
プリプリと怒る椛。
さっきまでの怯えた雰囲気はさっきの一言で払拭されたようだ。
「じゃあ、その犬耳は何さ。趣味か?」
「歴とした本物です!」
それを証明するかのようにピコピコ動く白い犬耳。
……え?
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