第一章 俺とわんこ

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「俺、妖怪なら河童が好きなんだよね」 実に唐突な話題転換だが、仕方あるまい。こいつの戯れ言を聞き続けるメリットも特にあるまい。 河童好きなのも本当だしな。 「河童ですか?」 しかし椛は微妙そうな顔をしていた。 「なんだよ、その顔は」 「いえ、変わった趣味をお持ちだなぁ、と」 いきなり襲ってきた自称天狗に言われたかねぇよ。 「だまれモフモフ。さっさと山に帰れよ。何だっけ?物の怪の山だっけ?」 「若干違う!……そうですね。帰って良いなら帰らせてもらいますよ。……じゃあ、事故とはいえ今回はごめんなさいでした。」 あれ事故なん? そう思った時にはもう椛は玄関から出て行ってしまっていた。 そして翌日。……のさらに翌日。 そこには再び椅子に縛られた椛の姿が……。 「……何故戻ってきた?」 「……迷子っちゃいました」 迷子っちゃった、じゃねぇよ。 「それは良いけど、迷子で何でここに来たんだよ」 「だって……ここ以外知ってる場所がないんですもん」 何なのこいつ。超めんどくせぇ。 「なんだよそれ。自分の家にすら帰れない犬って……」 「犬じゃないですって!」 何でそこだけ元気に反応してんだよ。
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