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「ちょっと待って下さい。何ですかその、せ、性なんちゃらっていうのは!?」
「簡単だ。俺の性欲の捌け口になってくれればいいんだよ」
簡単だよね?余裕だよね?俺は絶対やらないけど。
「なんで私がそんな事……」
「生きるためだろ?それとも何、このまま野垂れ死にたいんだ?」
椛の抗議を一蹴して、俺は椛の左側の食卓に腰掛ける。
脅すような口調だが、一応事実だろ。
しばらくの沈黙の末、椛は静かに泣き始めた。
「……………」
「……………」
手を縛り付けているせいで涙は隠せてないが、声は上げないし顔も伏せない。ただ俺を悔しそうに見つめる椛。
あぁ。こいつはどうしてこうも俺の嗜虐心を擽るのが上手いのか。
そっと椛の前に膝をつき、指で頬に垂れる涙を拭ってやる。
「すまん。ちょっとからかいすぎた」
自分でも素直すぎるぐらいにあっさりと謝罪した。
「……もう酷いことしません?」
「しないよ」
嘘。するけどね。
「……住まわせてくれます?」
「うん。お前がここにいたいなら」
違う。ここを出たいと言っても行かせないだろう。
「意外と優しいんですね?」
「意外と、ね」
優しいんじゃない。寂しいんだ。
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