第一章 俺とわんこ

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「ちょっと待って下さい。何ですかその、せ、性なんちゃらっていうのは!?」 「簡単だ。俺の性欲の捌け口になってくれればいいんだよ」 簡単だよね?余裕だよね?俺は絶対やらないけど。 「なんで私がそんな事……」 「生きるためだろ?それとも何、このまま野垂れ死にたいんだ?」 椛の抗議を一蹴して、俺は椛の左側の食卓に腰掛ける。 脅すような口調だが、一応事実だろ。 しばらくの沈黙の末、椛は静かに泣き始めた。 「……………」 「……………」 手を縛り付けているせいで涙は隠せてないが、声は上げないし顔も伏せない。ただ俺を悔しそうに見つめる椛。 あぁ。こいつはどうしてこうも俺の嗜虐心を擽るのが上手いのか。 そっと椛の前に膝をつき、指で頬に垂れる涙を拭ってやる。 「すまん。ちょっとからかいすぎた」 自分でも素直すぎるぐらいにあっさりと謝罪した。 「……もう酷いことしません?」 「しないよ」 嘘。するけどね。 「……住まわせてくれます?」 「うん。お前がここにいたいなら」 違う。ここを出たいと言っても行かせないだろう。 「意外と優しいんですね?」 「意外と、ね」 優しいんじゃない。寂しいんだ。
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