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「ちょっと。これブカブカなんですけど……」
「文句言うなよ。これぐらいしかサイズないんだから」
そもそも身長20cmくらい違うんだぞ。
「出掛け先で買ってやるから」
タンスの奥からデニムを引っ張り出しながらそう言うと、「ありがとうございます」と満開の笑顏でお礼を言われた。
「……どうですかー?」
「ぷはは。似合わねー」
腹を殴られました。
「自分で渡しといて似合わないはないでしょう!?」
「実際ヤバイって。コスプレではなくなったけど余計頭悪そうな格好になってら」
そう。椛の格好を一言で言い表すなら、馬鹿。現代風に言うとDQN。
「今時フード被った白髪のチビなんて中々いねぇよ。しかもズボンはダボダボだし」
「しかもこの服重い……」
全体的に有り余った感のある服を摘み、疲れた表情の椛。
「出かける前からそんな疲れたとか言うなよ。ほら、時間もないんだから行くぞ?」
「は~い」
椛の気の抜けた返事と共に、俺たちは家を出た。
ーーーーー
俺達が買い物に来たのは自宅から15分程の距離にある駅前地区のデパートだ。
周辺の地区に比べて都会っぽい感じがしなくもないので、駅前地区は絶え間なく混雑している。
「要するに俺にとって最悪の地形なわけだよ」
「ちょ、この光眩しすぎませんか……?」
相変わらず俺の話しを聞かないなこの犬っころ。
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