第一章 俺とわんこ

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「では、こんなのはどうですか?」 「おぉ、き、綺麗ですね!」 「でしょう?あとは、こんなのも手頃な価格でですね……」 「か、可愛い。……でも、着方がわからないです……」 「大丈夫。私が教えますから」 「本当ですか!なら、ちょっとだけ着てみたいです!」 「ふふ。なら、こっちの試着室で着替えましょう」 ーーーー何このアウェイな空気。 というか何であんなに仲良くなってんの?パッとみても仲の良い姉妹にしか見えねぇな。 いやぁ、最近の店はサービスがすごいのだね。 「お客様。椛ちゃんが着替えるまで少しお話ししませんか?」 「おおっと」 気配なく背後に現れる店員さん。俺只の一般大学生だけど、こんなに簡単に背後取られたことってないかも。 「お話し?俺、女装趣味はないんですけど?」 「いえ、セールストークとかではなく普通のお話しを。とても暇荘でしたので」 まぁ、その通りよな。 「服の着方は教えなくていいんですか?」 「もう教え終わりましたよ。そこまで特殊な服でもないので」 それもそうか。幼稚園児だって自分で服くらい着れるしね。 「ところで、椛ちゃんとはどういう関係で?まさか、本当に兄妹ではないのでしょう?」 そこまで話してやる義理なんざねーだろ、とは思いつつも暇なので答えてしまう。 「訳ありなんですよ。関係的には恋人の方が近いです」 「恋人ですか。……とってもお似合いですね」 「ありがとうございます」 そしてさっきの空白については何も聞きません。
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