第一章 俺とわんこ

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それから待つこと5分。ようやく試着室のカーテンが開かれた……わけではなく、椛が首だけを外に覗かせた。顔は不自然なほどに紅潮している。 「こ、このヒラヒラ短いんですけど、もっと長いのないですか……?」 あぁ、思ってたよりもパンツ見えそうで困ってるんだなぁ。 「あら、それでも充分愛らしいですよ?」 「きゃあああ!?ち、血が出てますよぉ!?」 目にも留まらぬ速さで試着室のカーテンを捲り鼻から大量出血してる店員。こいつはただのレズなのか? 「店員さん、ティッシュを使ってください試着室が事件現場みたいになってます。あと椛。パンツ見えてもいいからその服見せろ」 ちなみにパンツがみたいわけではない。断じて。そもそもどんなパンツ履いてるかは知ってるし。 「こんな感じ何ですけど、どうですか?」 試着室からゆっくりと出てきたすっかり女の子らしくなった椛は、顔を真っ赤にして上目遣いでこちらを見る。 「……良いんじゃないか?」 どうやらこの店員のセンスは中々のもんらしい。 確かにまぁ、可愛らしくなったもんだ。 「良かったですね。褒めてもらえて」 鼻血を拭いた店員さんがニヤニヤしながら椛の頭に手を置いた。 椛は嬉しそうに、「はい!」と返事をした。その姿はやはり姉妹のようだ。
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