第一章 俺とわんこ

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「…………」 「…………」 沈黙がリビングを支配する。 昨日大人の仲間入り(二つの意味で)を果たした大学生と、椅子に縛り付けられた犬耳の少女(正体不明)。 お互い向かい合うように、しかし目は合わせぬように顔を伏せたまま椅子に腰掛けている。 「あの……」 犬耳が口を開く。 「……顔をあげるんじゃない。そのまま話せ」 だって恥ずかしいし。 「……分かりました。あの、この縄外してもらっても……」 「無理だ」 間髪入れずに答える。 この危険、というか淫乱な犬の縄を解くなんてそんな自殺行為は出来ない。できるわけがない。 「つーか、さ。お前、昨日俺にしたこと覚えてる?」 「ぼんやりとは……」 申し訳なさそうに言う犬耳。 なんか罪悪感が芽生えてきた。 「いや、そこまで項垂れなくてもいいんだって。こっちは何故にあんな行為に走ったのかとか、そういう理由が聞きたいだけだし」 そこまで言い切ったところで、ホワンホワンと昨日の情景が頭をよぎる。 いかん。雑念が大量生産されやがる。
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