第一話 ‐天使の血‐

3/4

380人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
あまりにも綺麗で、引き寄せられるように俺は郵便ポストの前に座り込む。 赤いポストの上で歌う。 小さいからだ。 肩まである漆黒の黒髪。 月を見上げる。 鋭い…力のある。 傷ついたような瞳。 歌い終わることなく。 同じメロディーを何度も何度も繰り返す…。 ふいに綺麗な声が止まって月を見ていた瞳が俺に向けられる。 続く沈黙。 耐えかねて俺が言葉を発した。 『もー終わり?』 なのに、ソイツは何も話さない。 対して表情も変えない。 『すばるー!!…すばるー?あ、おった。よこ!おったで?』 独特の関西弁の男が走ってきて、ポストの上にいるソイツに両手を広げる。 反応しない、ソイツに手を広げ続ける男に少し遅れて、つきの光が透けそうなくらい色の白い男が来た。 『すばる、病院戻ろ?みんな心配してるで?』 首を横に振り続けるソイツを見ていた二人が。 どうやらやっと俺に気付いたみたい。 『あ、何かご迷惑おかけしましたか?』 八重歯の男が俺に申し訳なさそうに話しかけた。 『いえ、歌声があんまり綺麗やったから…聞いてただけです。』 ちょっとはにかんで言うと、二人の男が固まった。 『すばるが…歌ったんか!?』 黙ってた白い男が興奮ぎみに俺の肩を掴んで問う。 八重歯の男は、おっきい瞳から。 涙を流していた。 涙を流す八重歯を白いやつが優しく抱き締めてる。 あ、恋人なんや。 一瞬で悟って、ポストの上を見上げると。 さっきよりも優しい目をしたソイツがいた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

380人が本棚に入れています
本棚に追加