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その日、仕事が終わったのは日付がとっくに変わった頃だった。
「う~~寒っっ」
日中は暖かいけれど、深夜はまだ冷える季節。
足早にマンションに入り、エレベーターで7階まで上る。
彼女から連絡もないし、なんとなく空しさが心を襲う。
「ミツ、やっぱり俺だけだよ・・」
小さく呟き、溜め息をつきながら自分の部屋へ向かう・・
「・・・?!」
そこには愛しい彼女の姿。
頬をピンクに染め、寒そうに手をこすり合わせるその姿は、なぜか幸せそうに見える。
仕事の疲れなんて一気に飛んでいく。
ニヤけそうになるのを抑えながら、彼女のもとへ近づく。
「ーーーあ・・!
お、おかえり、なさいっ!」
俺に気づいた彼女は少し照れくさそうに微笑んだ。
「ただいま!」
彼女が部屋の前で待っているなんて初めてのことで、とてつもなく嬉しくなる。
今すぐに抱き締めたい衝動をなんとか抑え、鍵を開ける。
「どうぞー
なんか温かい飲み物もってくるから
座って待ってて。」
「ん、ありがとぅ」
何度も部屋には遊びに来ているけれど、今日はなんだか特別な感じがする。
会いたくて仕方なかったから?
彼女が待っていてくれたから?
グレーのワンピースを着た彼女は少しソワソワしながらソファに座る。
その後ろ姿さえ愛しくて・・
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