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「あの家じゃない?」
歩き続けて二十分くらい経っただろうか。
椎名が指差す方向には住宅地から一際離れた丘にある高嶺家があった。
「あれですね。住宅地から孤立したような不良物件で見つけやすいです」
「いや、不良物件の使い方間違えてるから。不良ってグレてる方の不良じゃないから」
不良物件と呼ばれた高嶺家は不良物件な訳がなく、広々とした庭、プール、リッチな貴族的間取り……と、とても不良物件とは呼びにくい家である。
高嶺家が見えてから一同は、さらに十分ほど歩いた末、ようやく高嶺家にたどり着いた。
「着きました女王!」
「よし、帰れ」
「はっ! ……って、うぇっ!?」
ここまできて、まさかの帰宅を宣告された柳楽は、涙目で膝から崩れ落ちた。
確かにとてつもなく可哀想な扱いであるが、美咲妃……女王にとっては柳楽に対して普通の扱いである。
「ちょっとくらい……遊んでくれたっていいじゃないですか」
「今回は遊びにきたのではなく、新しい生徒会としての仕事を皆で協力して終わらせようと集まったのだから、お前は邪魔にしかならない」
「うわー……今日も直球だし、いつもよりキレがある分傷つくなー」
湿った地面が歪んで見える柳楽の目には、溜まりに溜まった涙が姿を現していた。
美咲妃は腕を組み、そっぽを向いた。
「それじゃあインターホン鳴らしますよ?」
白崎が鞄を右側に持ち直し、左手の人差し指でインターホンを鳴らした。
『はい、高嶺です。って、白崎達か』
「はい。白崎です。今到着しました」
『思ったより早かったな。勝手に上がってきてくれ』
「わかりました。皆とお邪魔させてもらいますね」
白崎は皆に伝え、玄関へと向かっていく。
全員が初めての高嶺家に何らかの期待をしていた。
「久しぶりだな……高嶺家は」
「言っておくけど、柳楽は外で待機らしいから」
「それならもう帰らせてください!」
柳楽の言葉もむなしく、皆は高嶺家へと入っていった。
「すごい……広いです」
「いいところに住んでいるのだな」
「私の家よりは狭いですね」
高嶺家は白崎家よりは狭いらしい。
白崎以外のメンバーは、今目にしている高嶺家より白崎家の方が広いということを、信じられず黙るしか他なかった。
見た目同様、白崎はお嬢様という部類に入る人間なのだろう。
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