藩主の子

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 そんな平助を引き取り育ててくれたのは道場主の伊東精一であり、よく可愛がり面倒をみてくれたのが伊東大蔵だった。  伊東大蔵は平助より九つ歳が上で、伊東精一に力量を認められ婿養子となった。  平助もその恩義に応えるべく、明くる日も明くる日も、ひたすらに剣に打ち込んだ。 「平助、腕を上げたな」 「大蔵先生! ありがとうございます」  伊東大蔵は清潔感に溢れ、剣の腕も立ち、文学にも秀でた。  平助は憧れた。  自分の目指すべきものは、全てそこにあったからだ。 「平助、少し旅に出てはどうか?」  ある日、大蔵の部屋へ招かれ言われた。 「は!?旅といいますと?」  平助は突然の事だったので驚いた。 「精一先生からは既に了承を得ています。平助はもっと色々な世界を見てくるべきです」  大蔵は平助の素質と努力を見込み、剣術修行の旅に出てはどうかと持ち掛けてくれたのだ。
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