試衛館

3/8
前へ
/147ページ
次へ
 江戸の数ある高名な道場ではなく、そんな田舎者が…それは真なのだろうか?  もしこれが真実だとしたら、相当の腕前に違いない。  平助は己の腕試しには、これ以上ない相手だと感じた。 「ごめん……」  平助は試衛館道場の門を叩いた。 「どちら様で?」  すると中から、色黒で長身の少年が出てきた。  骨格はしっかりしているが、顔には幼さが残る。  おそらくは自分とたいして歳も変わらなそうに見えた。 「拙者、藤堂平助と申す者です。剣術修行のおりに、沖田殿の名声を聞き参りました」 「そうですか、それではこちらでお待ち下さい……」  少年は手を差し出し、「ささこちらへ」と平助を案内した。
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!

90人が本棚に入れています
本棚に追加