試衛館

4/8
前へ
/147ページ
次へ
「今日は稽古が休みの日なんです」  道場の中を見回しても、少年以外誰も見当たらなかった。 「して、沖田殿はいずこに?」  平助が聞くと、少年は木刀を持って言った。 「申し遅れました。私が試衛館天然理心流塾頭の沖田総司と申します」  沖田は、ひょいともう一本木刀を手に取り平助に手渡した。 「立ち合いは木刀で構いませんよね?」  平助は「はい」と返事はしたものの、少々驚いた。  この若さで塾頭を務めているとは、見たことも聞いたこともない。  あの噂は本当かも知れない。  沖田の妙な落ち着きが、さらに信憑性を増した。
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!

90人が本棚に入れています
本棚に追加