~い~

2/2
前へ
/16ページ
次へ
 ドーン、ドーンと最初から数えて結構上がった花火は、まだ数がある。まだこいつとはサヨナラしなくていい。  そう思っても、瞳から雫は絶え間なく流れていく。  枯れる事はなく、尽きる事もなく、飽きる事もなく、ずっと流れ続いていく。  私達の間には、言葉は交わされる事はなかった。言葉が無駄に思える位に、雫がずっと流れていた。  こいつは雫が流れている間、ずっと私の髪を撫でていた。それが当たり前のようにずっと。  ずっと撫でていた。  分かっていた。  泣いても、叫んでも、嘆いても、呼んでも、待っても、こいつはもう二度と帰ってこない。  四十九日が過ぎたら、もう会えない。  分かっていた。  でも、この少しの間でもこいつといれて、良かったって思いたかった。 。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加