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僕は家族を殺した殺人犯
だから、みんな僕を嫌う
僕もみんなが嫌いだ
でも何で君は僕を嫌わないのだろう
君のにっこりした笑顔はとても綺麗で輝いていた
ときどき聴かせてくれる君の口笛は僕の心を癒してくれる
僕もそれを聴かせようとするが出てくるのは馬鹿なメロディーだけだ
それでも君はまたにっこりと笑う
「君の口笛はなんでそんなに上手いの?」
僕は聞く
「あなたの口笛はなんでそんなに下手なの?」
君が言った
そんな変な会話をするために僕は毎日君のところに向かう
「また来たんだね」
君がそう言うと僕は「また来たよ」と答える
「優しいのね」
君がそう言うと僕は「優しくなんかないよ」と答える
ただ僕が「また明日も来るね」と言うと君は決まってにっこりと笑った
それなのに君はある日いなくなってしまった
「もうここにはいないの」
そう言ったのはここの病院のゴリラみたいな看護師さん
消えるな
消えるな
僕の前から消えないでくれ
僕は叫ぶ
来たよ
来たよ
また君のところに来たんだ
廊下を歩く少年が口笛を吹いている
あいつなんかより君の方が上手く吹けるはずなのに
また君の口笛を聴かせてくれよ
そう思っても聞こえてくるのは少年の口笛
僕の目から水がたくさん凄くたくさん出てくる
まるで君とは正反対の人殺しの僕だったけど
まるで君とは正反対の優しくない僕だったけど
まるで君とは正反対の悪魔のような僕だったけど
僕は君のことが好きだったみたいだ
初めての涙を流しながら、君を真似てみながら、君を思い出しながら
僕はどこかで君がいつものようににっこりと笑っていてくれるように下手くそな口笛を吹いてみた
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