陰と陽

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思考停止。 今何て言ったの? 妖っていったのだろうか。 妖怪…ということだろうか。 戸惑っていたことが 顔に出てたみたいで 「ん?もしかして人?」 「う、うん」 「そうか、妖でも半妖の姿はあまり見えないのにお前すごいな」 無邪気に笑う彼に対して、顔が林檎飴のように紅くなるのがわかる。 「だが、はっきり見えないものなら無理に見ようとするなよ」 「え、」 そして私の頭に手を伸ばしかけてやめた。 「じゃあな」 私の横を通り過ぎる。 とっさに 「待って」 と声をかけた。 彼はゆっくりと振り返りこちらを見据える。 呼び止めたはいいものの、 何が言いたいかを考えていない。 「名前は?」 やっと出た一言。 冷たい風が頬を撫でる。 火照った頬には調度よく感じる。 「九重空(ココノエ ソラ) お前逢坂つゆりだろ」 「え、なんで名前…」 まだ言ってないのに。 「ここら辺に転入してくる生徒は珍しいからな。まぁ、よろしく」 体を前に戻し、再び歩きだし、ひらひらと手を振り去っていく。 その後ろ姿に声をかける。 「よろしくね」
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