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「ユキちゃん、私、今日でお別れなんだ」
「えっ?」
公園で会ってすぐにそう言われた。なんのことだか、さっぱりわからなかった。
「フミちゃん、何言ってるの? 早く遊ぼっ」
手を差し出すとフミちゃんが首を横に振った。その顔はいつもの元気なフミちゃんの姿ではなかった。
「ユキちゃん。本当にお別れ。私、もうここには来れない」
「なんで……。意味わかんないよ」
本当は何となく意味をわかってた上でそう言ったんだと思う。わかってたけど、信じたくないっていうわがままから出た言葉だった。
「遠くの方に行くことになったんだ。だからもう会えない」
「僕そんなの聞いてないよ」
そう言うと、フミちゃんは少しの間、口をつぐんだ。
「でも……」
一瞬詰まりながらもそれに続けて声を出した。
「でも……また戻ってくるんだよね? いつ戻ってくるの?」
本当は聞きたくなかったのに、どんどんと言葉がこぼれてきた。フミちゃんの表情はやはり暗いまま……。
「もう……たぶん、何年もここには戻ってこないよ」
「そんなのって……」
長い沈黙が続いた。
12月の夕方はずいぶんと寒かった。その寒さが凍りつかせたかのようだった。長い長い、凍てついた静けさ。
「私、もう行くね」
「えっ……。うん」
返事に合わせるようにして、フミちゃんが走り去っていく。
「ユキちゃんっ!」
フミちゃんの声が公園の中に響いた。
「短い間だったけど、楽しかったよ。ユキちゃんと一緒に遊べて楽しかった!!」
振り返ってそう言ったフミちゃんの目の下には、うっすらと涙の筋が見えた。
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