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「このロボットは少し壊れかけている。新しいのに変えるか、もしくは修理をした方が良い」
しかし、おじいさんは「このままで良い」とニコニコと言いました。
子供達も、おじいさんがニコニコと言う姿を見て、このままで良いんだと思いました。
おじいさんは、介護が出来なくなりつつある介護ロボットに、幼少の頃の話、社会に出てからの話、おばあさんとの出会いの話、子供達の話、色々と話しました。
人工ロボットも、楽しく聞いて、質問をして、楽しく楽しく、毎日、お話をしていました。
おじいさんは寝る時に必ず、ベットの側に椅子を置き、そこに座って貰い、疲れるまでお話をしました。
「今日は疲れた。また明日、話の続きをしよう」
おじいさんはウトウトとしながら言うと、介護ロボットはギギギーと機械が錆びた様な音を出しながらゆっくりと立ち上がり、「大丈夫でしょうか?何かあったら好きな時に呼んで下さい」と言い、部屋を出て行きました。
部屋を出るときに、おじいさんは、「ありがとう」と言う様になりました。
数ヶ月すると、人工ロボットはおじいさんの介護があまり、出来ない様になってしました。
それでもおじいさんは、自分の事は自分でするよ、と不自由な足で、ゆっくりとゆっくりとやるようになりました。
その内、人工ロボットは、「大丈夫でしょうか?何かあったら好きな時に呼んで下さい」としか言えないようになりました。
それでも、おじいさんは人工ロボットに、色々な話をしました。
夜、寝る時には、部屋から出る時、ドアを開けられなくなった人工ロボットのために、ゆっくりと立ち上がり、ドアまでゆっくりと行き、開けてあげるようになりました。
人工ロボットもゆっくりと部屋から出て、「大…丈夫…でしょう…か?何…かあったら…好きな…時に呼…んで下さい」と言うと、おじいさんは「大丈夫だよ、ありがとう」と言いました。
人工ロボットは日に日に、音声も途切れ途切れ、動くも鈍くなっていきました。
そんなある日、夜、いつもの様にドアを開けに行こうとすると、人工ロボットは椅子から立ち上がる気配がありませんでした。
おじいさんはゆっくりと人工ロボットの所に歩み寄りました。
「大丈夫か?」
おじいさんは話しかけますが、人工ロボットからは全く機械音がしません。
身動き一つしない、全く機械音のしない、人工ロボットがそこに居ました。
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