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――とある少女の場合
「お見舞いの方が見えましたよ」
「断ってください」
即答された看護師さんが戸惑いもせず、苦笑いを浮かべた。
「…同級生の方だそうですが」
「断ってください」
看護師さんは苦笑いを浮かべたまま、諦めたように病室の扉を閉めた。
――ごめんなさいね。どうしてもダメですって。
廊下から扉越しに聞こえる看護師さんの声に、何も感じなくなったのはどれほど前か……。
そもそも同級生の顔なんて、もう何年も前に忘れてしまった。
「酷い」? 「残酷」?
そんなこと、私は知らない。
私が彼らの顔を覚えていないのは私のせいではないし、私がこんな状態になったのは私のせいではない。
私の目が光を捉えられなくなってから既に数年が経っているし、病院に運び込まれてから「面会謝絶」の札が病室の扉から外されるまでに一年もかかれば、仕方のないことでしょう。
――そんな~、心配してきたのに……。
心配なんてしてほしくない。強がりなんかじゃなくて、私はもう心配される状態ではないから。
怪我はもう完治しているし、視力はもう戻らないとわかっている――更に、麻痺して動かない下半身と左腕と僅かにしか動かない右腕が再び快活に動かせるようになるわけじゃない。
――私たち、本当に心配してるんですよ。
帰ってよ…。どうせ私を憐れんで「心配する友達」を演じたいだけでしょうに。
彼らが影で私のことを笑っていることも、私を利用して異性との接近を目的にしていることも知っている。
「あ~あ、さっさと壊れてしまえばいいのに。こんな世界」
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