一章

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昔々、日本には人に悪さをする妖怪と、人を守る陰陽師がいた。 時代が変わるごとにその二つは姿を消していったが、ここにはまだその血を引くものがいた...。 「はぁぁ!」 「やぁぁ!」 道場内は木刀同士がぶつかり合う音が響き、試合をしている少年たちで賑わっていた。 しかしその隅で試合をしているのは、この試衛館で唯一の女の子。 「はっ!」 「そこまでっ」 少女は試合を終えると、満足そうに笑顔で両親の元へ駆けていった。 「お父様、お母様、私また勝ちましたよ!」 「えらいわ、一華。強くなったわねぇ」 「最後の試合にはとてもふさわしかったな」 「....うん」 そう、この試衛館には今日でお別れをしなければならない。 しばらく親の元を離れ稽古に励むと、今度はその両親の都合で遠くに行かなければならなくなったのだ。 「今日で一華ともお別れなのか」 「歳兄....」 「今日で君の憎たらしい顔が見なくて済むと思ったら、嬉しくてしょうがないよ」 「総ちゃん....」 私はどーしても寂しくなり、涙を流してしまった。 「泣くなよ一華。きっとまたどこかで会えるよ」 「平助...」
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