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私は怒りに我を忘れ、式神を何体も召喚した後、全力で男に立ち向かった。
「ほぉ、少しは使えるようだな」
「一華....ダメ....」
お母様は力を振り絞り、我を失った私を抱き締めた。
「一華....自分を忘れてはいけないわ...。どんな時も...自分を..仲間を信じなさい....」
「お母....様....?」
「愛してる....」
お母様は私の額にキスをして、術で私をどこかへ送り込んだ。
「まだ生きていたのか。死に損ないが」
「娘を守るのが...親の役目よ....」
「あの娘は生かしておこう。おもしろいことになりそうだ」
「あの子の成長した姿は見られないわよ...。貴方はここで死ぬのだから」
お母様は自分の血を使い、村全体に組み込まれている術を発動させた。
この術は村を滅ぼす禁断の術。陰陽師の村になら必ずと言っていいほど組み込まれている。
そう...お母様は、この男を道連れにしようと考えているのだ。
『ドーンッ!』
大きな音とともに、おさまりかけていた炎は村を飲み込み、空を紅に染めた。
大好きだった村の人たち....私の育った村...。
もう何も...何も残ってない...。
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