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と海斗の笑いに恋の変な緊張は解かれた。
「卒業といえば、今日卒業式だったんだよね?」
海斗はカバンからジュースを取り出すと
「そうだね。退屈だったけど」
とそっけなく答えた。
恋はうらやましい反面、疲れた顔でジュースを飲む海斗の心理がつかめなかった。
「これからどうすんの?大学いくの?」
いきなり現実じみた質問におじけることもなく恋は
「〇〇大学に行くんだ。海斗君は?」
と流れに任せて聞いてみた。
「え?俺も一緒だね。んじゃまた会えるね」
恋はそのまた会えるねという言葉が大学という新境地に足を踏み入れる恋にとってすごく心が楽になった気がした。
何せ恋が行く〇〇大学は評判がいいわけでもなく悪いわけでもないのだが、大学の場所自体が離れているので一緒にいける友達も知り合いもいなかったのだ。
「そっか。よかった」
嬉しさいっぱいにそういうと海斗はまた大学で、と帰途の歩みを再開した。
恋もまた、退屈な店番に戻ったが、もう卒業式に行けなかった後悔は恋の心になかった。
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