39人が本棚に入れています
本棚に追加
ゴーレムの手前50メートル。海夜はゆっくりと近づいていく。すると、ゴーレムの額にある札が赤く光り、今まで静止していた土塊の巨体が、ゆっくりと動き出した。
一歩、二歩、と大地を揺らしながらゴーレムは、ゆっくりと海夜に近づく。
「トロい……」
呟き、鼻で笑うと、両手をゴーレムの頭へと伸ばす。
「おらあぁぁ!」という気合いの入った声をあげながら近づいてくる結子には気づかずに。
「神よ、我に光を授けたまえ」
短く唱えると、海夜の両手が淡い紫色の光に包まれた。
前につきだしていた両手のうち、右手だけを後ろへ引くと、紫の光が弓と矢を形創り爛々とし始める。
「砕け!」
海夜の凜とした声とともに、勢いよく矢が放たれた。矢は、真っ直ぐゴーレムの頭――額を目指す。
そんな海夜の後ろを、結子は目をつむったまま素早く駆け抜けていった。
「む?!」
最初のコメントを投稿しよう!