39人が本棚に入れています
本棚に追加
頭が真っ白になった結子は、反射的に走り出した。
すると、前方に他の受験者の後ろ姿が見えてきた。黒い艶やかなポニーテールがリズムよく揺れている。
彼女にならば、全力で走れば追い付けるだろう。1人では恐くて仕方のない結子は、彼女を目指して懸命に地を蹴り走る。
そんな結子の存在に気づいたポニーテールの受験者は、心底嫌そうに舌打ちをした。
「おい、魔犬を連れて私に近づくな」
足を止めずに顔だけを向け、ポニーテールは刺刺しい声音で叫ぶ。その声に結子は驚くも他者の存在に安堵した。
「あ、あれ、後ろから追いかけてくるやつ?」
「それ以外に何があるんだ。とにかくついてくるな」
「えー! ちょ、スピード上げないでええ」
これが竜崎海夜と結子の出会いだった。
最初のコメントを投稿しよう!