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「ひ、はひ……はぁ……はぁ……。ま、だ着かないの?」
息切れ混じりにつぶやく。
「黙れ。私は最短距離しか走ってないんだ。かかってもあと10分だろう。感謝しろ、馬鹿」
「馬鹿じゃ……ないってば……はぁはぁ。 さっき……結子って教えたのに」
絶え絶えになりながらも、言葉を返す。
置いていかれないように、海夜の背中だけを見つめて重くなってきた足を前に前に動かす。
海夜の背中の向こうに光が見えてきた。
――ゴールはすぐそこだ。怠くて息が苦しくて胸が痛いけど、もう少し――結子は、疲れきった心と体に鞭を打つ。
海夜に続いて、森を抜けた。
「つ、着いたあ……はぁ……」
気づけば魔犬もいなくなっていた。結子は、全身の力が一瞬でぬけてその場にへたり込んだ。
「いや、まだだ」
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