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「ーーこの物語は、1人の若き勇者が、悪しき存在から『物語』の世界を守る、伝説の物語であるーー」
「なに格好つけてるのよ」
べしっと、後頭部に軽い痛みが生じた。
開けた空間の中心部で決めポーズをとった瞬間、振り返ると、そこには1人の女性がいた。
「なにすんだよ、人がせっかく華麗な前口上をしてたのに」
「誰に対してよ。やめた方がいいって、そういう『俺の存在を全国の人に届けたい!』ってアピールするの。しかも1人じゃなくて2人だから」
人の見せ場をぶち壊した女ーーアリアは、軽く嘆息したあと、こう続けた。
「とにかくアヴィス。早く最初の夢空界にいかないと、マスターに怒られるわよ」
「だって、ものすごく面倒くさいし。それに、マスターに依頼がきたんだから、マスター自身が何とかすればいいだろ」
地面に寝転がったアヴィスを見て、アリアは深く嘆息する。
「前口上までしてたのに、やる気はないの?」
「あれは、俺の見せ場だったからやったんだよ」
まったく、と言いたげな表情をしたあと、アリアは近くにあった木の棒で何かを描き始めた。
起き上がって見ると、それは魔法陣の一種だった。
「仕方ないでしょ。マスターは直接"鍵"と接触する事ができない。『物語』の世界の危機を救うことができるのは私たちーー」
アリアは一拍おいて、こう続けた。
「ーー"神人"なのだから」
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