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「それにしても、どうして俺らなのかね」
再び地面に寝転がったアヴィスが、いまさらな質問をしてきた。
「そんなこと、決まってるじゃない。私たちにしか行えない、大切な使命だからよ」
「いやだって、俺らがマスターの弟子になったのだって偶然だろ? 悪者退治なら他の神人(かむど)でも出来たはずだって」
アリアがわざとらしく悲しい表情を見せ、
「・・・アヴィス、それ本気で言ってるわけじゃないよね? もし本気だとしたら私、泣くよ?」
このままでは面倒なことになると思った。
「悪い悪い、冗談だよ冗談。そんなわけないだろ? さすがに俺にも使命感というか、マスターには恩を感じてるよ。俺らにとってマスターは、父親同然だからなーー」
「よし、描けた」
「ーーって、人の話聞いてた!?」
「ごめん、話が長くて」
「そんなに長くないからね! しかも感動する話を『ごめん、話が長くて』の一蹴!?」
さすがは俺のパートナー・・・。
「はいはい、それよりも早く魔法陣のなかに入って」
「ちょ、待っ!」
「あ、言い忘れてた。マスターが『六式』は三式以上は制限して使いなさい、だそうよ」
「制限ってなに」
そこまで言ったところで、アヴィスは魔法陣のなかに消えていった。
「あの2人は、ちゃんと果たしてくれますかね」
自慢の書斎にて文書に目を通していた80代と思しき男性は、1人嘆息していた。
「アリアはともかく、アヴィスは少し心配ですが、アリアがいれば何とかなるでしょう」
2人からマスターと呼ばれていた老人ーーマスター・ゲイルは、文書に何事か書き綴ると、窓から見える景色を眺めていた。
「ーー頼みましたよ、2人ともーー」
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