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白く透き通った雪が、街中を白く染めていくのが見えた。 いつにない降雪量。ほんの数十分前まではなんの変哲も無かった街が、今では白銀の世界へと姿を変えていた。 教室の窓が曇った。僕は軽く右手で拭くと、にじんだ景色にもう一度目を向ける。 雪を溶かす薬――確か塩化カリウムだとか聞いたような気がするけれど、それを使った校庭にも、 山のように雪が積もっていた。先に帰った生徒のものであろう足跡も沢山残っている。 ……まるで、長野とかに居るような、そんな気分だった。こんなに雪が積もったのを見たのは、ひょっとすると、生まれて初めてかも知れない。 本当は、今すぐにでも外に出て、あのやわらかそうな雪を踏んでみたかった。きっとスポンジのようにやわらかい感触なのだろう。
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