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「ごめんね、もう少し掛かりそう。成績表の直しなんて、私初めてやったから……」
先程から教卓で作業をしていた女性――野々宮 美麗(ののみや みれい)先生が申し訳なさそうに言った。
放課後になっても教室に残っている理由はこの人だ。期末に必ず配られる成績表に、ちょっとした誤りがあって今直してもらっているのだけれど、中々作業が進まないらしい。
時々ペンの動きが止まるときがあった。
僕は別に用事も何もないのだけれど、このような日には、なんとなく早く帰りたかった。
「あ……はい」
小さく返事をすると、僕は窓の外を眺めた。この景色は、不思議と何度見ても飽きなかった。
高いマンションやビルディング、広々とした公園、大通り。
こんな見慣れた景色、普段なら飽きるどころか、見もしないだろうけれど……雪が積もったからなのだろうか。このままあと30分は見ていられる気がする。
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