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「お父さん……どこにいるの?」 そう言っても、答えは帰ってこないという事は分かっていたが、いなくなった日の事を思い出すと、言わずにはいられなかった。 カリカリカリ…… 閑散とした教室の中、ペンを走らせる音だけが聞こえる。振り返ると、丁度先生がペンを置いたところだった。 額の汗を拭って長い黒髪を揺らしながら、先生は『はい』と言って、成績表を差し出した。 「あ、ありがとうございます」 軽く返事をして、差し出された成績表に手を伸ばす。 ……気のせいだろうか。先生の手が、微かに震えているように見える。苦笑いもしているし、何かあったのだろうか。 何も起きていないと良いのだけれど、様子から見てそれはないだろう。
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