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成績表を受け取ると、顔を真っ赤にしている先生に気を使って、中身を見ずに鞄の中に入れる。小さく挨拶すると、僕は早々に教室を出た。 微かだが、先生が安堵の息を漏らす音が聞こえた。 僕は思わず、『やっぱり何かあったんだな』と呟いてしまった。一応、先生は聞いていなかったみたいだけど。 窓の外を見ると、あんなに降っていた雪が止み始めていた。頼りない小さな粒が地面に落ちては、すぐに溶けていく。 それは、殆ど雪の降らなかった今朝と、似たような景色だった。傘を忘れてしまった僕にとっては好都合な筈なのだけれど、やはりどこか寂しい気がする。 窓から視線を外して小さく溜息をつくと、僕は早足で階段を下りた。 一定の間隔で、乾いた音が鳴り響く。なんとなくその音が気に入らなくて、僕は数段飛び越えて一気に下に降りた。
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