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マーレ・パシフィコ(静かなる太洋)の一番西の果て、温暖な海流がゆっくりとなだらかな海岸線をなめるように流れ、数多くの生命のゆりかごとして、太陽光とプランクトンで、この世界では珍しい程の生物密度の高さを誇っていた。 もう、どれ位この海で生きてきたんだろう。 海底は、砂よりも泥が多かった。その分プランクトンなどの餌は豊富で、デノミスクスやワクエイシヤが海底で巨大なコロニーを作り出していた。彼等の間を象の鼻のように長い口吻を泥の中に突込んで、プランクトンを漉し取って、食事に没頭して忙しく動き回るオパビニアには奇妙なことに眼が五つあって、いつも上方の海面を見つめていた。上方にはオパビニア達の15~20倍の大きさの巨体と三葉虫の外皮をも簡単に噛み砕く、強靱な口を持った、この世界の食物連鎖の頂点に立つアロマノカリスの一群が遊えいしていた。 彼等に見つけられたら、お終いだ。 オパビニア達に逃げる術は無い。海底を這い回るようにしか動けないオパビニアと比較すると、優雅なる程に泳ぐアロマノカリス。時折この両者の間を奇妙な小判型の躯を波打たせ慌ただしそうにオトンドグリフィスの白っぽい躯が横切って行く。
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