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どうしたの、って誰かに優しく聞いてほしかった。
確かな根拠なんてどこにもなくたっていいから、大丈夫だよって言ってくれるだけで良かった。
きっとわたしはそれだけで安心できたと思う。
でもその『誰か』は、今はいない。
「朔、?」
朔が、いない。
初めてのことじゃないだろうか。朔がわたしの傍にいないのなんて。
誰か、誰か、助けてよ。
ここは何処なの。
みんな、何処にいるの?
「、」
部員たちが面白がって着せた、衣装。
このまま誰かに遭遇したら、不審者に思われること間違いない。知り合いなら事情を説明することもできるだろうが、
ここで知り合いに会える気が、しない。
だってここ、どう見ても学校じゃない。
空を仰げば一面に広がった木々の葉の隙間から陽の光が零れ、眩しくはないけれど目を細めた。
こんな意味の分からない状況じゃなかったら、空気が美味しいってほのぼのしてるかもしれないけれど。残念ながら今、この空気を味わってる余裕なんてなかった。
「…、?」
「だ…ですか…?」
え、と周りを見渡す。
間違いなく今、誰かの声が聞こえた。
安心よりも驚きの方が勝り、ぽかんとしたまま段々とこちらに近付いてくる足音に思わず声を潜めてしまう。
だ、れ?
動かない動けないまま、がさりと足元の雑草を踏みながらこちらへ向かってくる。
怖いわけではないけれど、身体が完全に硬直していたのはきっと脳内処理が追い付かなかった所為。
そして疑問は直後、現れた人物の異様さにかき消された。
「誰か、いるんですか?」
なんで、同じ恰好をしているの?
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