遣らずの雨

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さっぱり訳が判らなかったけれど、とりあえず自分の身が(生命的な意味で)危ないということは察したから、 ひとまず、一歩二歩と後退り、 くるりと背を向けて、 逃げました。 「待ちなさ…っ」 「、?」 追い掛けられるとは予想していたが、途切れた言葉を不思議に思い振り返ると、誰かに捕まっていた。 これまた着物を着た、栗色の髪の女性。 その髪色に思わず朔を思い出したけれど、それ以上のことを考える余裕なんてなくて心の中でお礼を言ってそのまま走っていった。 それからどれだけ走っても見覚えのある景色がどこにもなくて、和服の所為で走りにくいしレプリカといえど腰に挿した剣は重いしで、どちらかというと文化系のわたしは少し走っただけでくたくただった。 せめて朔が、いてくれたら。 そんなことを思う。 調子に乗るから本人には言わない、と思ってはいるけれど、言ったっていいから、それ以上に助けを求めたい。 ねぇ朔、いつもみたいに無責任な言葉でいいからさ。 教えてよ。ここはどこなの?
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