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夕日が町を茜色に彩り、夜の始まりを告げるかの様に街灯が光を灯す。
腰まで伸びた黒い髪が印象的なその女性は一人、小綺麗なアパートの入り口にいた。
余程良いことがあったのか、時折奏でる口笛の音色が心地よい。
銀色に輝く階段を数段上り、物が乱雑に置かれた廊下の手前から2つ目のドアの前で彼女は立ち止まり、鞄の中を探っている。
隙だらけの無防備なその後ろ姿は、見ているだけで涎が滴り、“今だ”と私に“その時”を感じさせる。
彼女に気付かれないようにその音を最小限に留め、高鳴る胸の鼓動を必死に落ち着かせ、私は静かに近付いて……。
『パンッ!!パンッ!!』
乾いたその音は静寂を切り裂き、辺りを火薬の香りが包み込む。
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