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剣闘試合までトシミツ一行は、宮殿近くの近衛軍団の長官宅の客人として逗留することとなった。
長官は名をテオドリック・マクリウスといい、テオドリックとトシミツは異国人同士ながらも同じ将軍なこと、王室であるウエッジ家とマクリウス家も、カミシマと皇室も親戚であることなどから話が合い、彼らはカオル達も含め、毎夜酒を酌み交わしながら語り合った。
剣闘試合までの間に二人は親友になっていた。
ある夜、剣闘試合は真剣ではなく木剣で戦うため、トシミツの太刀と脇差しの長さに合った木剣が欲しいと話したところから話題が広がり、トシミツ達のもつ武器の話や戦の話になった。
「トシミツ、お前の剣は長くて重いな。不便ではないか?
モーラ軍は、グラディウスという、短めの剣か、サーベルと言って、細身の軽い剣を使う。
グラディウスは接近戦に有利なのだ」
「いや、不便ではない。
脇差しもあるしな。
これは“刀”と言って、切れ味ならば抜群の剣だ。
特にこれは“膝切丸”といい、その昔私の先祖が、大きな物の怪の膝を斬り落としたと言われている。
カオルの持つ薙刀は重く、不便に思えるがな…」
こうしてテオドリックとトシミツは仲を深め、トシミツは少しずつモーラに慣れ、モーラを好きになっていった。
剣闘試合の頃には、服装もすっかりモーラ人らしくなっていた。
髷だけはそのままであったが。
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