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「カオル…。ひさかたぶりに、殿の本気が見れるかも知れないぜ」
「間違いないだろう。
ヤマトのオウシュウで見た以来であろうか?」
「あれは退却戦だろう?
ナガトの海戦か、下手をしたら、お前以来だ」
二人は微笑んだ。
その内に決勝戦が始まった。
二人は構え、睨み合ったまま動かない。
トシミツは微動だにしないが、ゼノ・バルブスは汗を垂らし、焦れた様子だった。
腕が疲れたのか、ほんの微かにバルブスの肘が下がったのをトシミツは見逃さなかった。
相手の右側から顔を薙ぎに行く。
バルブスは寸での所で木剣で打ち払うが、トシミツの猛攻は止まらない。
左右に薙ぎ、上からも下からも木刀がバルブスを襲う。
同時に少しずつ前進し、バルブスを場外際まで追い込んで行く。
「ぬぅぅ、この、東方蛮族が…!」
バルブスがトシミツの身体ではなく木刀を狙って木剣を振るった。
カーンと音を立て、トシミツの木刀は弾き飛ばされ、カラカラと渇いた音を出して地面を転がった。
群衆は視線を、転がる木刀に奪われた。
再び二人に視線を戻すと、試合は決着していた。
バルブスが頭から場外に落ち、失神していた。
数いる群衆の中で決着の瞬間を見逃さずにいたのは、カオルとサブロウ、テオドリック、それに女王ユリアだけだった。
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