3人が本棚に入れています
本棚に追加
「チュンチュン、何でおいらがこんなこと……」
必死に翼を動かして風を送ることで、船を前進させる雀。
「仕方ないやろ、じゃんけんで負けたんやから」
「そうじゃ、パーしか出さなかったお主の責任じゃ」
「そんなこと言ったって、おいらの羽根でどうやってじゃんけんすりゃいいのか……」
そう、この船は電動システムなんてものは皆無で、まさかのオールすらないという事態に、誰が船を動かすかという話になったのです。
そこで公平を期すために、じゃんけんになったのですが、案の定雀が負けたという、ただそれだけの展開なんです。
文句を垂れる雀でしたが、ゆっくりと進み続けた船はようやく目的地が見えるとこまでやって来たのです。
「よっしゃ、あれや多分!絵本で見たことあるわ!雀はん、もう少しやで!」
いよいよ迫るメインイベントに、ややテンション上がり気味のしりたろう。
雀も自分の見せ場を必死に頑張っています。
すると、風を送っていた雀の視界に何やらおかしなものが入ってきました。
それは不自然に海面からあがる水しぶき。
しかも段々とこちらに近づいてきているようです。
ゾッと恐怖心を抱いた雀は、今まで以上に力いっぱい翼を羽ばたかせ始めました。
最初のコメントを投稿しよう!