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「何や、お前ら…同情するなら服をくれ」
しりたろうがそう言うも、ここにはまともに服を着ている人物など一人もいないのです。
雀、猿爺さん、犬
それぞれが服なんか着なくても、温かいものを身につけているからです。
羽根やら体毛やらです、はい。
「わんわんっ!!」
突如、狂ったように吠え出した犬は、島の中心部へ向かって駆け抜けていきました。
「ちょ…待てや!」
「チュンチュン、行っちまったってばよ」
「やれやれ、仕方ない奴じゃのう…」
残されたしりたろう達は、立ち尽くす暇もなく犬の後を追い掛けていきました。
しかし、犬のスピードは尋常ではなく、森の中に入ったところで、すっかり姿を見失ってしまったようです。
「おーい、どこにいるんやぁー!」
しりたろうが大きな声で呼び掛けるも、まったく犬の声は聞こえてきません。
「チュンチュン、おいらが空から見てみるってばよ」
雀はそう言うと、大空に高く舞い上がりました。
しりたろうと猿爺さんは特にやることもないので、じっとただひたすらに雀の帰りを待ち続けています。
やがて二人の期待を背負って、舞い上がっていた雀が帰ってきました。
その表情はどこか浮かない様子です。
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