ようこそ香霖堂へ

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「それにしても驚いたよ」 そう語るのは現在お茶を淹れている霖之助さん。 どうぞと出されたので僕はとりあえずお礼を言った。 水分は摂らなくても大丈夫だけど、逆に摂った場合は大丈夫なのだろうか。 「森で漂流物を探していたら琢磨君が倒れていたんだからね」 「そう……ですか」 十中八九、いやむしろ十中十であの見えない壁のせいだろう。 あれはいったい何なのか。 「あの……」 「ん、なんだい?」 のんびりとお茶を飲む霖之助さんに僕はあの壁のことを尋ねることにした。 「壁か……」 「壁……です……」 「もしかしたらそれは結界のことかもしれないね」 「結界……?」 結界とはあれだろうか。 結で滅なあれ。 「君は外から来たのだろうから、まずはこの世界について説明しなければならない」 「はい……」 世界とはまた大仰な。 と思っていたのだが。 「まず、この世界には妖怪がいる」 「はい……?」 与えられたのは衝撃の言葉。 霖之助さん曰く。 この世界は結界によって外と隔てられている。 曰く。 神やら悪魔やら妖怪やらが普通にいる。 曰く。 物を盗んでは死ぬまで借りているだけだと言い張る白黒の泥棒がいる。 曰く。 曰く。 そんな感じに説明されたこの世界は、僕の常識を崩壊させるのに十分な衝撃を備えていた。
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