ようこそ香霖堂へ

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「さて、驚いている所悪いとは思うけれど、僕も琢磨君に聞きたいことがあるんだ」 「なん……ですか?」 「君は何だい?」 いきなり例の問題を掘り返された。 どう答えればいいのか。 「人間……?」 「そこで疑問形なんだね」 苦笑する霖之助さん。 「僕も確証はないし、君も半信半疑といった様子だけど、僕が思うに君は人間ではないよ」 人間ではない。 第三者からの、人外宣言。 何となく予想はしていたけど、いざ言われると中々に堪えるものがある。 「じゃあ……僕は……」 「恐らく妖怪。少なくともこちら側、幻想の存在であることは間違いないね」 ということは今は亡き家族もまさか。 そんな僕の心配を汲み取ったのか霖之助さんは口を開く。 「まあ元々人間だった者が妖怪になることは稀にはあるし、この世界はどんな存在も受け入れるからそう気に病むことはない」 良かった、少し安心。 僕も家族も確かに生きた人間だったという事を信じられそうだ。 だが僕が幻想の存在になったのなら気になる点が一つ。 「もう外に……戻れない?」 「うん、残念だけど。」 「そう……ですか」 やはりか。 先程の話を聞いてから予想はしていた。 まあ尋ねてみただけで、正直外に戻る気はないのだが。 しかし、妖怪宣言された割に僕もよく落ち着いていられるものだ。
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