ようこそ香霖堂へ

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「しかし納得がいったよ」 「?」 「君から人間味が感じられないことがさ」 それは妖怪化したからだろうか。 「別に妖怪だからという訳ではないよ。僕も半分妖怪だが見た感じ普通の人間だろう?」 そうだったんですか。 見た目は確かに普通の人間ではありますが。 「琢磨君は気付いていないようだけど、起きてから君、一度も瞬きをしていないんだ。表情も変わらない。」 まるで人形と話しているようだった。 そう付け加える霖之助さん。 それにしても瞬きなんてすっかり忘れていた。 する必要がなかったから。 表情なんてものも同じくすっかり忘れていたし。 「これからを考えると表情を動かす特訓とかはした方がいいだろうね。」 確かに人間関係、延いては、妖怪関係を円滑に進める為には必須な特訓だろう。 「まあそれも含めてこれから頑張っていけばいいさ」 「はい」 「さて、もう時間も遅い。夕飯の支度をするとしよう」 そう言って霖之助さんは立ち上がる。 外に意識を集中すると確かに。既に迂闊に出られない程暗いことが理解できた。 とはいえ周囲を把握出来る僕には明るさも暗さも関係なく動く事が可能だったり。 「ではこれからよろしく、琢磨君」 「よろしく……です」 不安もあるが、きっと何とかなるだろう。 何となく、そう思える。 「ああそうそう、言い忘れる所だった」 「?」 「ようこそ、幻想郷へ」
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